2013年10月号

ウエルビーコラム 2013年10月号

消費者が真に必要なサービス開発を
既成概念からは見えてこないビジネスモデル

「老後の介護保障 自助の流れ強まる 生保各社 好調受け相次ぎ新商品」
という記事が“SankeiBiz”にアップされていました。
保険各社の介護保険の販売は好調で 日本生命保険は今年4~8月の介護保険の販売件数は約26万件で前年同期比2割増。明治安田生命も 昨年9月に発売した介護保険の販売件数が 6月末には約2万2,000件となり 1万6,000件という年間の販売目標件数を大きく上回っているようです。

先月末の社会保障審議会介護保険部会で 年金収入280ないし290万円以上は2割自己負担へという厚生労働省案が示されたこともあり 生命保険協会では「公的保障の見直しが進めば 公助から自助への流れはますます強まる」という見解を述べています。

一方 生命保険契約(生命保険協会調査・2010年度)を見てみると 解約が532万件・失効(保険料の未払いにより契約の効力が停止すること)が148万件もあります。
保険金のベースではそれぞれ44.7兆円・8.9兆円のものぼっています。
生命保険文化センター調査によれば 解約と失効の原因のうち32.5%が「保険料を支払う余裕がなくなったから」というものでした。

つまり 年間221万件(死亡保険金ベースでは17.4兆円)もの生命保険契約が経済的理由で解約や失効しているのです。

この221万件の中には 仙台往診クリニックの川島孝一郎医師が問題視している ように 死亡しなくても高度障害になれば保険金が受け取ることができるにもかかわらず 知らずに保険契約を解約してしまうという例が少なくありません。
治療費や介護費用の支払いのために生命保険を解約し わずかばかりの返戻金をそれに充てようとしたり 保険契約を解約するという事例があることも現実です。

これに対して欧米では 25年ほど前から 治療費や介護費などの資金が必要になったとき 加入している生命保険を第三者に対して売却することでまとまった資金を得る「生命保険の流通市場」というものが存在しています。
売却代金は 保険金の7割から3割程度ですが 解約した場合の返戻金と比べれば数倍となります。
契約者側は保険料の支払いは不要となり 被保険者が死亡したときに第三者である買い取り業者が生命保険会社から死亡保険金を受け取ることで清算されます。
日本では「生命保険買取」と呼ばれるビジネスモデルです。
買い取る側からいえば 満期つまり「被保険者の死期」が早いほど得をする ともいえるためいい印象は持たれていないようです。

しかし 公的介護保険や医療保険には「高額サービス費」という負担の上限があるという現実を正確に理解すれば セーフティーネットとしての意義は 現状の民間介護保険商品の開発以上に大きいといえるのではないでしょうか。
既得権や既成概念から離れたところからしか 本当に必要なビジネススキームは生まれないものなのでしょう。

株式会社ウエルビー 
代表取締役 青木正人

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