2014年10月号

ウエルビーコラム 2014年10月号

すべての人間に問われる自己変革
地政学的リスクの高まりと地域包括ケアの共通点

イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が大きな脅威となっています。
オバマ大統領やケリー国務長官・ヘーゲル国防長官などアメリカ政府首脳は口をそろえて「同盟国や同盟勢力と団結する必要がある」と訴えています。
このような現状について 星野俊也・大阪大学副学長は以下ような見解を示しています。
「(国際社会では)現状変更を迫る動きが顕著になっている。…実力をつけた非国家主体の行動。強力な軍事力を蓄えたイスラム教スンニ派武装組織の指導者が「カリフ(開祖ムハンマドの後継者)」を名乗り イラク・シリア両国にまたがる領土を横取りし「イスラム国」を樹立する様子は 植民地主義の名残の国境線を理想の原状に戻そうとする力学に基づく」(2014/9/11付日本経済新聞)。
このような動きは イスラム国だけでなく「ロシアによるウクライナ分断とクリミア併合の動きや中国の東シナ海や南シナ海における海洋進出」「北アフリカや中東・湾岸諸国の『脱専制化』」もしかりだと指摘しています。
これに続けて「各地で地政学的リスクを高めているこれらの動きは 現行の秩序モデルのゆがみに由来している。誤解を恐れずにいえば それは国家重視の秩序モデルに内在する『人間不在』の論理に原因がある」と論を展開しています。

私も欧米先進国の力による解決は不可能だと考えます。
同氏は「21世紀のこれからの世界を切り開いていく我々に必要なことは 主権国家中心の国際秩序論の見直しと我々一人ひとりの自己変革だ」と結論づけています。
これを「未来共生秩序」と名付け「自らと他者の尊厳に対する深い理解と敬意に立脚し 多様で異なる文化的背景や社会的属性を有する人々が互いを高め合い 共通の未来に向けた斬新な共生モデルを導き出す知識・技能・態度・行動力」のことだと定義しています。

翻って「地域包括ケアシステム」を概観すれば わが国のヘルスケアや社会保障の分野から進めらている新しい秩序のことだと定義できるでしょう。
この未来志向の秩序構築の基本こそが「自らと他者の尊厳に対する深い理解と敬意」「多様で異なる人々の高め合い」にほかなりません。
現在わが国で進行している高齢者施策に端を発したさまざまな変革は 単なる制度変更ではありません。
市民・行政・事業者各々が自己変革する覚悟が問われているといえるでしょう。

株式会社ウエルビー 
代表取締役 青木正人

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