2015年1月号

ウエルビーコラム 2015年1月号

課題は日本の社会保障だけではない
相次いで叫ばれる「資本主義の死」

新年あけましておめでとうございます。
日本の社会保障は大きな曲がり角を迎えていると 誰もが感じているでしょう。
しかし曲がり角を迎えているのは わが国だけでも社会保障だけでもないようです。

昨年 トマ・ピケティの『21世紀の資本』が世界的ベストセラーになりました。
彼の主張は
「現在進行している 格差拡大をもたらしている主要な力は 市場の不完全性ではない。
資本市場が完全になればなるほど 資本収益率が経済成長率を上回る。
賃金所得中心の一般の人の所得はGDPと並行して成長するのに対し 資本つまり富を持っている人の所得は 富をすべて投資すれば利益率で伸びていく。
つまり資本の論理そのものが不平等を拡大させる」
というものです。

一方 これと対をなすような主張が『資本主義の終焉と歴史の危機』(水野和夫)に記されています。
「日本と同様 世界の先進国が『ゼロ金利』政策をとっている。
資本を投資しても利潤が出ないという現実は資本主義の『死』を意味する」
としています。

さらに「拡大再生産が永遠に可能であるかのような資本主義が生み出した幻想から人々が解放され『定常状態』(ゼロ成長社会。GDPが一定で推移するような社会)に向けて軟着陸をめざす『長い21世紀』」を提案しています。

「定常状態」といえば 2003年12月号のコラム「年金制度改革の先にあるものは新しい価値観の上に成り立つ介護事業」では 広井良典氏の『定常型社会-日本の社会保障』の つぎのような提言をを取り上げました。

「少子高齢化が進展するこれからの日本では 経済成長率が落ちることを『生きていくスピードをちょっとゆるめること』だと認識すれば むしろ歓迎すべきではないか
現在の『年金重点型』の社会保障から『医療・福祉重点型』に再編すべきではないか」

これらの主張に対しては反論や批判もありますが イデオロギーではなく われられの未来を これまでとはまったく違った視点で考え直すときだと感じているのは私だけではないでしょう。

The difficulty lies, not in the new ideas, but in escaping from the old ones.
                             -Jhon Maynard Keynes

※ 2月15日(日) 介護給付費分科会の介護報酬諮問・答申を受けて 「2015年介護報酬改定から地域包括ケアの未来を探る」セミナーを開催します。 介護給付費分科会委員と中医協委員を兼ねる 医療・介護連携と地域包括ケア 構築のキーマン鈴木邦彦・日本医師会常任理事を迎え 2015年のみならず 山場の2018年・高齢化の到達点2025年を見据えた事業の羅針盤をお示しします!

株式会社ウエルビー 
代表取締役 青木正人

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