2015年6月号
ウエルビーコラム 2015年6月号
介護保険はセーフティーネットか!?
国家が二兎を追う時代の覚悟とビジョン
介護報酬改定が成立してわずか2か月ですが 3年後の2018年に向けた動きがすでに活発です。
5月20日の第122回社会保障審議会介護給付費分科会では 次期介護報酬改定に向けた主な検討事項として「地域区分の在り方」「処遇改善加算」「介護事業経営実態調査等の在 り方」「消費税10%に向けた対応」についてスケジュールが示されました。
このような動きが加速しているのは介護分野に限ったことではありません。
財務省の財政制度等審議会(財政審)や政府の経済財政諮問会議において 財政健全化に向けた社会保障改革が焦眉となっているからにほかなりません。
政府は2020年度までに基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する目標を掲げたうえで それに加え経済再生という「二兎を得る」という方針を打ち出しています。
このような困難な道をたどると決めた国家政策を踏まえ ヘルスケアに携わる事業者はどのような覚悟とビジョンを持てばいいのでしょうか。
野村総合研究所の坂本純―氏は「社会保険制度にはセーフティネットの役割 は果たせない」(「年金時代」2015年5月号)と述べています。
拠出制の制度によって成り立っている社会保険制度は 拠出していなければどんなに困窮化していても給付が行われることはない。 なぜなら拠出しなくても給付が支給されるようでは 保険料を納める人がいなくなるからだ。
という自明の論です。
つまり「介護保険制度も セーフティーネットの役割を果たすものではない」ということです。
国家には 生活保護制度などによって 社会扶助を行う義務があるのは当然です。
しかし 介護保険制度の受給範囲の制限や利用者負担の増大という施策をセーフティネット論によって拒もうとするのは 論理破綻をきたすという事実を事業者もしっかり受け止めなくてはならないということです。
われわれに求められているのは ひとつは未曾有の事態に立ち向かう「勇気」。
そして 次世代につながる「未来志向」なのです。
株式会社ウエルビー
代表取締役 青木正人