2016年11月号
ウエルビーコラム 2016年11月号
アジア健康構想が拓くヘルスケアの夢
わが国とアジア諸国が活力ある発展をともにする道
株式会社ウエルビーは 内閣官房が公募した「『アジア健康構想』実現に向けた高齢者介護の国際競争力に関する基礎調査」に採択され調査事業を実施することになりました。
この事業は
① わが国が人口減少時代を迎え 高齢者介護市場もやがて縮小に向かうとされる一方で アジア各国では 高齢者介護ニーズが急速に高まっている
② 経済連携協定(EPA)に基づく外国人介護福祉士候補者の受入れ 国際協力機構(JICA)による介護分野での国際協力など 高齢者介護をめぐる国際的なヒトやモノの流れが加速化している
という背景から
介護分野におけるアジア各国の相互互恵的なパートナーシップの構築と産業・人材の好循環の実現を図るため わが国で発達した介護サービス・システムのアジア各国における価値を分析し 我が国の民間事業者が現地で有意義な事業展開を行うために必要な視点・支援施策等を明らかにするために行うものです。
この調査は 内閣官房健康・医療戦略推進本部(本部長:安倍晋三内閣総理大臣) が本年7月に決定した 「アジア健康構想に向けた基本方針」 に基づいています。
アジアの介護マーケットをターゲットにしたわが国の介護事業者の進出は目覚ましいものがありますが それらの多くがパイロット的な事業レベルにとどまり 大きな成果を挙げているという状況にはないのも事実です。
わが国の介護事業者のアジア進出における課題には 以下のようなものが考えられます。
○ 海外ビジネスに必要な知識やノウハウ・経験等に乏しい
○ 現地の政府・行政機関や法人等とのパートナーシップが築けていない
○ 中長期的な展望や進出計画そのものが未熟である
○ 進出企業の多くが資金や人材の面で十分ではない
○ 介護保険制度に依拠した事業のまま進出しているため 公的制度のないマーケットに適合できていない
○ 日本の介護の優位性を正確に認識できていない
○ 日本の介護の特長を標準化できていない
このような課題は 個別企業による対応のみによって解決するのは簡単なことではありません。
政府が本格的な政策として取り組み 官民が一体となって対応する必要があります。
一方「海外進出」に対しては「大手営利企業の利益追及」「足下の状況を見ていない」などといった否定的なとらえ方があるのも事実です。
しかし このような取組みは 翻って 日本の介護が抱える課題の解決にもつながるという視点から見ると 国内の介護事業者にとっても大きなメリットが生まれます。
例えば アジア地域で日本とつながりの深い介護産業が立ち上がれば 後々 自国での就労や活躍の機会が生まれ 外国人が日本の介護教育を受けたり 介護現場で就労したり経営に参画することに強い意欲を持つようにもなるでしょう。
これらが実現すると わが国の医療・介護は アジア展開という新たなスキームを生み出すことで成長産業となり得るだけでなく わが国が成熟した先導的な国家として尊敬されるという確固たる地位をもたらすことになるはずです。
アジア地域での地域包括ケアシステムの構築やわが国の介護事業者のアジア展開などを相互互恵的なアプローチにより進め アジア全体のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:すべての人が生涯を通じて必要なときに基礎的な保健サービ―スを負担可能な費用で受けられること)と健康長寿社会の実現を目指すという壮大で夢のある国家戦略なのです。
株式会社ウエルビー
代表取締役 青木正人