2017年9月号
ウエルビーコラム 2017年9月号
日本の医療は生産性が低い!?
国民性にふさわしい皆保険制度
「日本のサービス『米より質高い』」というタイトルで、日米のサービスの質の比較した日本生産性本部の調査報告が日本経済新聞(8月30日付朝刊)に掲載されました。
この調査は、米国滞在経験のある日本人と日本滞在経験のある米国人に対して、日米のサービスの品質の違いに対して「どの程度価格を余分に支払っても良いか」との問い、「より多く払っても良い」分だけ品質が優れているとみなし、品質差を貨幣価値に換算して数値化したものです。
数値が高いほど日本の品質が高いことを示しています。
○ 日本のサービス品質は、宅配便や地下鉄、コンビニエンスストアなど今回対象としたサービス分野のほとんどで米国を上回る。
○ 日本のサービス価格が米国より低いと認識する分野が大幅に増加。宅配便などで米国より高いサービス品質を保っているものの、それが十分に価格に反映できていない。
といった結果が示されています。
「病院」についての調査からは、たいへん興味深い結果が見えてきます。
日本人に対する調査を見ると、116.6ポイントと日本の病院のサービス品質が米国を上回るとしていますが、米国人からすると米国のほうが品質が高い(93.4ポイント)と、日米で評価が逆転しています。
また「自国のサービス品質が高いと評価するポイント」を見ると、日本人が「正確で信頼できるサービス」「接客が丁寧」「迅速なサービス」といったポイントを評価しているのに対し、米国人は「従業員・設備が清潔」「個人的な要望を理解」といったポイントを高く評価しいるなど、評価軸に違いがみられます。
報告書では、「日本の高いサービス品質が価格に十分反映されていない“ミスマッチ”が発生している」と結論づけていますが、こと病院については的外れと言わざるを得ません。
米国では、最先端医療のレベルや病院の環境などに優位性があり、お金をかければいくらでも質の高い医療を受けることができますが、日本のようにすべての国民が一定以上のレベルの医療の恩恵にあずかることはできません。
また、その点を不公平や不平等と捉えるのではなく、自己責任・自己選択から当然だとみなしています。
権丈善一・慶應義塾大学商学部教授も指摘するように、日本の医療や介護は“付加価値”生産性は米国より低いレベルですが、公定価格である診療報酬や介護報酬をアップさせればたちどころに上昇します。
日米の医療サービスに対するスタンスの違いと、わが国の皆保険制度の特長が現れたものといえるでしょう。
株式会社ウエルビー
代表取締役 青木正人