2017年12月号

ウエルビーコラム 2017年12月号

自治体が医療と介護の連携を進めるために
真に住民のための地域医療構想づくり

診療報酬・介護報酬とも年末の予算折衝を控え、いよいよ大詰めを迎えようとしています。あわせて各市町の第7期介護保険事業計画策定も、胸突き八丁にさしかかっています。
ご承知の通り、次期計画策定の大きなキーワードに「医療と介護の連携推進」があります。
4月のコラムでも書いたように、都道府県が策定する第7次以後の医療計画は、2025年の医療提供体制を定めた「地域医療構想」実現のため、病床の整備や病床機能分化の具体的施策を盛り込むことになっており、計画期間が6年に改められ、作成・見直しのサイクルを一致させた介護保険事業(支援)計画との整合性確保は、新たな医療計画作成の最重要ポイントの一つだと言えます。
三原岳・ニッセイ基礎研究所准主任研究員は、レポート「地域医療構想を3つのキーワードで読み解く(1)-都道府県はどこに向かおうとしているのか」で、国は同構想を「病床削減のツールではない」と強調しているにもかかわらず、実は病床と受け皿としての在宅医療しか語っていないのが現状で、「病床削減による医療費適正化」と「切れ目のない提供体制構築」の2つの目的が混在している、と述べています。
続けて、ほとんどの都道府県は、前者の目的を重視しているのなら意識されてしかるべき「2018年度の国保の都道府県単位化」と「医療費適正化計画の改定との関係」をスルーして後者の目的を重視しており、その背景には、都道府県が地元医師会や医療機関関係者の反発を恐れたことがあるではないかとしています。
三原氏は、自らがプロジェクト・リーダーを務めた報告書「地域医療構想の成果と課題~合意形成を軸とした切れ目のない提供体制を」(東京財団・2017年8月)においても、地域医療構想には「日常的な医療ニーズをカバーする発想がない」「都道府県と市町村の連携が不十分」「住民自治・住民参加の取り組みが不十分」「政策的な対応が現場のニーズと噛み合っていない」という4つの課題を指摘しています。
厳しいながらも的を射た指摘が多く、地域医療構想の成果として、実質は病床規制以外に何の実効性も持っておらず、「作文」の域を出ていなかった都道府県による医療計画の策定において、住民を含めた関係者との連携を意識しつつ、切れ目のない提供体制の構築に乗り出すというスタンスの変化が見られることを挙げています。
とりわけ、「住民自治・住民参加、合意形成の促進」を目的に、区域やテーマに応じたきめ細かい議論を進め、住民にとって身近な市町村やNPOや市民組織などと連携するとともに、情報収集と公開を徹底するという「政策提言」は大いに賛同します。
ただし、「医療=都道府県」「介護=市町村」という分断を解消し、プライマリ・ケアや在宅医療に関する市町村の関与を高める方策として、市町村に医療計画の策定を義務付ける「市町村医療計画制度」(仮称)を導入する、という提言はいかがなものでしょうか。現状では、前述のような「役人の作文」が増えるだけという懸念が拭えません。

市町村が医療に関与する必要性

出典:「地域医療構想の成果と課題」(三原岳「第7回全国知事会・地域医療研究会」2017年10月)

現在の介護保険事業計画をはじめとする各種の事業(計画)を、「保健・福祉・医療・介護」事業計画あるいは「地域共生社会構築」事業計画といったものに包括・統合できるような環境づくりや合意形成が、今からはじめられればと期待しています。

株式会社ウエルビー 
代表取締役 青木正人

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