2020年1月号

資本主義とともに人類の成長も終わるのか!?
持続可能な進化は外面と内面の統合から

あけましておめでとうございます。

日本経済新聞が、新年から「逆境の資本主義」という特集の連載を開始しました。
「資本主義の常識がほころびてきた。資本を集め、人を雇い、経済が拡大すれば社会全体が豊かになる──。そんな『成長の公式』が経済のデジタル化やグローバル化で変質し、格差拡大や環境破壊などの問題が噴き出す。この逆境の向こうに、どんな未来を描けばいいのだろう」という投げかけから始まっています。

冷戦終結の直後、フランシス・フクヤマ(Francis Fukuyama)が『歴史の終わり』(The End of History and the Last Man)で、民主主義と資本主義の勝利を宣言しましたが、新冷戦ともいわれる現在、歴史は繰り返すのでしょうか。

しかし資本主義が生まれてから現在に至るまで、人類の歴史からすれば須臾の間といえるでしょう。
この間の現象だけを分析して「資本主義が最終的でかつ至高の政治・経済体制であり、これを覆すほどの変化はない」とみるほうが、あまりに短絡的ではないでしょうか。

たしかに格差が拡大している国も少なくありませんが、貧困率はこの30年間で大きく低下しています(右図参照)。
中国やロシアのような非民主主義の国々の台頭を脅威だととらえる声も高まっていますが、経済的・物質的に発展しているのは事実で、これらの国や人々の考え方は、その進化の過程だと考えることも必要だと思います。

米国の思想家ケン・ウィルバー(Kenneth Earl “Ken” Wilber Junior)は『インテグラル理論』(A Theory of everything)において、「世界における非常に厄介な状況の多くは、文明の衝突と段階の闘争という両方の要因が重なって引き起こされたもの」と述べています。
中国と西欧諸国との軋轢は、それぞれの政治・経済体制(たとえば国家主義と自由主義)が人の意識の発達段階(たとえば人権に対する考え方の違い)において衝突した結果だということです。
ウィルバーは「外面的な発達は、それに対応する内面的な発達がなければ、持続可能な形で実現することはできない」としています。
グローバル化は技術の進化の結果ではありますが、人の意識の進化が伴わなければ善にも悪にもなりうるのです。

私たちが更なる高みに上っていくのか、人間の歴史の終わりを迎えるのかは、多様な次元の統合(integrate)を一歩ずつ進めていけるかどうかにかかっているのだと思います。

本年が、みなさまにとって素晴らしい一年であることをお祈りしています。

                                  株式会社ウエルビー 
                                  代表取締役 青木正人

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