2021年4月号

海図なき時代を生きる私たち
対立・淘汰から協調・共存の社会へ

今日から新しい年度がスタートします。
この1年を”the year from hell”と呼ぶ人もいるほど、多くの人々がたいへんな日々を過ごしてきました。

【民主主義の危機の予兆】出典:3/31日本経済新聞

昨日の日本経済新聞の1面は「酷似する危機の予兆 偏る富・高まる不満 直視を」という見出しで、世界と民主主義の危機を伝えています。
スウェーデンの調査機関V-Demが世界各国の政治体制を数値化した「自由民主主義指数」によると、2016年以降、北米と西欧の平均値は10年前と比べマイナスが続いていると訴えています。
民主主義の退行はファシズムが広がった1930年代以来のことだ、としています。

一般社団法人日本経済調査協議会は、寺西重郎・一橋大学名誉教授を委員長に「資本主義委員会」を20回にわたり開催し、報告書『海図なき資本主義の時代~我々はどこへ向かうのか』をとりまとめています。
報告書は、これからの資本主義のあり方には、単純な二項対立や同一化という分かりやすい議論を超えた多様性を持つことが必要だということを示しています。
日本が、これからどのような資本主義社会を築いていけばいいのか、とりわけコロナ後の新しい事態に適応する経済社会をどのように構築すべきなのか、についていくつかのポイント挙げました。

その第一が、2000年代以降の小泉政権、第2次安倍政権が進めてきた新自由主義に基づく構造改革路線を踏襲、加速すべきなのかという問題です。
この新自由主義的な構造改革路線に従えば、大企業に比べ生産性が低いと見られている中小企業に対する保護的な政策を見直して、多過ぎる中小企業の整理淘汰を加速すべきだとの意見が強まるのは当然でしょう。

一方、新自由主義的な構造改革路線こそが、日本を含む先進国の経済社会を新型コロナ感染症のような外的ショックに対し非常に脆いものにしてきたことも、まごうことない事実です。
報告書は、現在の世界経済は、それぞれの経済が独自の資本主義の精神に基づいて「異種」資本主義の精神の相克、協調、共存の時代になっており、その相違点が、現在、先鋭的に現出してきているというのが時代の特徴である、と述べています。
米中の対立は単なる貿易摩擦や覇権争いでもなく、一種の文化的争いと位置付けています。

文化や精神の対立が先鋭化してきたのは、それが包含、統合されるための過渡期であるからではないかと、私は考えます。
「我々には地球的人類的視点に立ち、より高次な人間性の完成の視点から、この問題に立ち向かうことが求められている」という報告書の結語にあるような、より高次な社会やシステムが生まれるための「いま」を大切にしていこうと思います。

                                  株式会社ウエルビー 
                                  代表取締役 青木正人

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