2021年8月号

LIFEの求めるリスキリングとは
DX時代の介護事業経営の核心

7/7付けの日本経済新聞は「工場従業員にDX教育 学び直しを企業が主導」という記事で、デジタル技術の進化に対応するための「リスキリング(Reskilling;学び直し)」の取組みの重要性を指摘しています。
リスキリングとは、企業が今後必要となる仕事上のスキル・技術を、再教育で社員に身につけさせることをいいます。

DX(Digital Transformation:デジタルトランスフォーメーション)が本格化するなか、それに伴う人材投資として、リスキリングの必要性が高まっています。
【デジタルビジネス推進企業の取り組み状況】出典:『IT人材白書2020

IT人材白書2020』(情報処理推進機構)によれば、現在わが国の企業が取り組んでいるDX内容として、以下の5つが示されています。
業務の効率化による生産性の向上
既存製品・サービスの高付加価値化
③ 新製品・サービスの創出
現在のビジネスモデルの根本的な変革
企業文化や組織マインドの根本的な変革

介護事業においても、こうした要請が急速に高まっていることは、2021年度介護報酬改定の最大のポイント「LIFE」(科学的介護情報システム)の運用が開始されたことを見れば明らかです。
LIFEに求められる成果も、当初は、生産性の向上という観点が大きなものといえます。
しかし、このシステムが定着・発展していった暁には、介護サービスの質を向上させ付加価値を高める、新しいサービスモデルを生み出す、さらには事業や組織自体にイノベーションをもたらすことが想定されます。
リクルートワークス研究所は、日本企業がリスキリングを進めていくうえで欠かせないステップとして
1 スキルを可視化する
2 学習プログラムをそろえる
3 学習に伴走する
4 スキルを実践させる
の4つを掲げています(「Works Report 2021」)。

ただし、介護事業においてこうしたリスキリングを行っていく場合に、忘れてはならない大切なポイントがりあります。
定量的データ至上主義に陥らないように、教育・学習に気を配ることです。
ビッグデータの重要性は考慮しながらも、利用者一人ひとりの個別性や自分らしく生きるための意思という、生活を支える介護の根幹をなす部分をないがしろにしないことです。
報酬の新設という環境の変化に適応することに汲々として、事業経営者がこれまで思い描いていたビジョンを見失う状況に追い込まれていくことになれば、本末転倒です。
時代や社会、利用者のニーズに合わせて変えるべきところはどこなのか、一方、変わることなく大切に守っていかなければならないものは何か。
そういう普遍的な価値を見定めていくことが、DX時代の介護事業経営の核心です。

 

                                  株式会社ウエルビー 
                                  代表取締役 青木正人

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