2021年9月号

コロナ禍が幸福度にもたらした影響は!?
他者との信頼、つながりが幸福感をもたらす

【日本のウェルビーイング実感】出典:Global Wellbeing Initiative

米国の調査会社ギャラップが、今年度から日本を対象に、心と体の充実感や幸福度を表す「ウェルビーイング」を四半期ごとに測定する調査を始めました。
2021年4~6月期はウェルビーイングの実感度が良好な人が27%、低い人の割合は11%、どちらともいえない層は6割でした。
コロナ禍においても、「日本人の約4人に1人が今の生活に満足し、将来も明るい展望を持っている」(8月31日付「日本経済新聞」)といえます。

では諸外国はどうなっているのでしょうか。
国連の「持続可能な開発ソリューション・ネットワーク」(SDSN)が2012年から毎年発表している2021年版「世界幸福度報告書」では、「国民一人あたりのGDP」「社会的サポート」「健康寿命」「人生選択の自由」「気前のよさ」「汚職や腐敗の認知」の6つの指標を分析し、積算しランキングしています。

【幸福度ランキング2021年版】出典:持続可能な開発ソリューション・ネットワーク

フィンランドが4年連続で首位、以下アイスランド、デンマーク、スイス、オランダとヨーロッパの国々が続いています。
日本は、149の国と地域中56位となっています。

本年の報告書は、新型コロナウイルス感染症の爆発的な拡大が人々の生活様式や質にような影響を与えたかにフォーカスし、政府がこのパンデミックにどのように対処してきたかに言及しています。
報告書作成に関わったカナダ・ブリティッシュコロンビア大学のジョン・ヘリウェル(John Helliwell)教授は、「各国の人々に自分の生活を自己評価してもらったところ、驚くことに、幸福度の平均は下がっていなかった」と説明しています。

平均値として幸福度は低下していないという一方で、幸福度の格差は開いているという見方も広がっています。
前野隆司・慶應義塾大学教授が473人のビジネスパーソンを対象に実施したアンケートでは、「コロナ禍において幸福度は上がりましたか?」という質問に対して42.5%の人が「上がった」と回答しているのに対し、「変わらない」が39.1%、「下がった」が18.4%の計57.5%という結果になりました。
幸福度という面においても分断が始まっているかのようです。

「世界幸福度報告書」で4年連続首位となったフィンランドを分析した、米国ジョンズ・ホプキンス大学の集計によると、人口約550万人のフィンランドは、新型コロナウイルス感染症による死者数は805人(日本は8,869人:3月22日現在)と、欧州諸国の大半の半分以下に抑え込むことができています。
報告書では、フィンランドは「パンデミックの最中、人命と生活を守るのに役立つ、他者との相互の信頼関係に関する複数の指標で非常に高い順位を示した」と指摘しています。
ヘリウェル教授は、「新型コロナウイルスを、全ての人に影響する共通の外的脅威として認識したことで、団結や仲間意識が強まったことが理由かもしれない」としています。

幸福度には、新型コロナウイルスの悪影響より、コロナ禍で得た「他者との連帯感や仲間意識、つながり」のほうが、大きなプラスの影響を与えているようです。
こうした「つながり」を得られず、孤独を感じた場合に幸福度は低下するといえるでしょう。

                                  株式会社ウエルビー 
                                  代表取締役 青木正人

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