外国人人材確保の大前提は!?(2023年8月号)

目次

外国人人材確保の大前提は!?
共生と多様性を尊ぶ風土はあるのか

人口減少、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少を背景に、政府の外国人労働者の受入拡大政策は急ピッチで進み、実態はすでに「移民受入れ国」と言われるまでになっています。
「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」の中間報告書(2023年5月11日)では、「現行の技能実習制度は廃止して人材確保と人材育成を目的とする新たな制度の創設を検討」と明記されています。
とりわけ担い手不足に悩む介護分野では、7月末に「外国人介護人材の業務の在り方に関する検討会」が立ち上げられ、年内をめどに意見をまとめる予定です。
7/31日本経済新聞社は、外国人人材の確保に関する世論調査結果を公表しました。
外国人が介護などの分野で働きやすくなるような規制緩和の可否についてたずねた問いに対しては、「人手の確保のために推進すべきだ」と賛成する回答が69%と、「サービス水準の維持のために推進すべきでない」の21%を上回りました。
【外国人の人材確保への規制緩和の可否】出典:「日本経済新聞」7/31朝刊


一方、日本への外国人の無条件の受入れについて聞いたところ「受入れには慎重であるべきだ」が60%に対し、「受入れを推進すべきだ」は36%にとどまっています。
【外国人の無条件受入れの可否】出典:「日本経済新聞」7/31朝刊


たしかに欧米などの現状を見ると、移民政策には課題が多く、ためらいを覚える心情も理解できます。
しかし、無条件の受入れには慎重であるべきだと回答した人のうち58%は、人手確保の規制緩和には賛成していることも分かっています。
「労働力」としての外国人人材はほしいが、「隣人」として外国人が入ってくることには大いに不安や抵抗があるというご都合主義が透けて見えます。
JICA緒方貞子平和開発研究所の「2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究」報告書(2022年3月)には、目指すべき方向性として「日本人も外国人も夢を持って安心して活躍できる豊かなダイバーシティ社会の実現~国際協力を通じた取り組みによる『選ばれる日本』と『開かれた日本』」が掲げられています。
【外国人との共生社会実現に向けた取り組み課題】出典:「2030/40年の外国人との共生社会の実現に向けた取り組み調査・研究」


弊社が携わった「介護現場での社会実装化を見据えた外国人介護人材キャリア育成に資する有効な手法確立のための調査研究」(2022年度厚生労働省老人保健健康増進等事業)の中で、「外国から労働力を迎えたが、来たのは『人』だった」と、ある社会福祉法人の理事長が話しています。
外国人から選ばれるためには、日本が彼らから信頼され、リスペクトされる国でなくてはなりません。
そのためには、私たち自身が彼らを信頼し、リスペクトすることが前提となります。
制度を整えることも大切ですが、その前に「共生」社会に生きていく日本人の覚悟が問われているのではないでしょうか。

株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人

1955年富山県生まれ。

1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。

大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。

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