Fax不要の真の意義は!?(2022年10月号)
Fax不要の真の意義は!?
顧客価値視点がなければ凋落は必至
当社は、2006年4月からスタートした「介護サービス情報の公表制度」の調査機関を制度創設時から務めています。
鳴り物入りで誕生したこの仕組みも、今では6割を超える都道府県・政令指定都市は定期的な訪問調査を行っておらず、オワコン扱いなのは多くの関係者にとっては共通認識です。
【情報公表システムを活用した指定申請のウェブ入力の概要】
東京都からも、当社のような調査機関には対象の事業者への連絡調整のために電話番号とFax番号は伝えられますが、メールアドレスは教えてもらえません。
訪問調査の日程を決めるだけのために、やむを得ずFaxを使い続けざるを得ないのです。
「昭和」のスタイルそのものです。
ところが、DX化や文書負担軽減の観点から、このシステムが再び脚光を浴びる可能性が出てきました。
社会保障審議会介護保険部会の「介護分野の文書に係る負担軽減に関する専門委員会」において、情報公表システムの機能を拡張して行政への提出書類のウェブ入力・電子申請を行うことが決定されたのです。
今月から段階的に運用が開始され、2023年度下期にかけてこのシステムが利用可能な自治体が順次拡大されていくことになります。
【データ連携前後のケアプランのやり取り】
また2023年4月からは、居宅介護支援事業所と介護サービス事業所の間でやり取りされる居宅サービス計画書、サービス利用票などがケアプランデータ連携システムの運用によりデータで送受信が可能になります。
ようやくアナログな通信方法から脱却できるのでは、とホッとしています。
介護や医療の業界だけでなく、わが国では不動産や飲食、宿泊業では依然としてFaxが幅を利かせています。
「Digital or Die」とも称されるグローバルな動向から見ると、日本のデジタル化が大きく遅れを取っている大きな要因の一つが、国、地方自治体の取組みの立ち遅れでした。
【データヘルス分析のイメージ】
こうした状況がようやく動きはじめました。
ガバメントクラウド(Gov-Cloud)と呼ばれる、国の全行政機関や地方自治体が共同で行政システムをクラウドサービスとして利用できるようにしたIT基盤の整備が進められています。
今回のケアプランデータ連携システムにおいても、異なるベンダーの介護ソフト間であってもデータ連携ができるようにするために、厚生労働省が標準仕様書を公開しています。
医療の電子カルテ普及を阻害していたソフトの互換性のなさも、来年度からはじまるシステム開発で解消される予定です。
データヘルス改革の到達点のひとつは、利用者自身が医療や介護情報を閲覧できる仕組みの整備にあります。
顧客価値創造の観点からすれば、医療機関や介護事業者が行政に後れを取ることは決してあってはなりません。
株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人
1955年富山県生まれ。
1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。
大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。