審議会は本来の役割を果たせ (2022年12月号)
誰が意思決定を行うのか!?
審議会は本来の役割を果たせ
現在、社会保障審議会介護保険部会では2024年度の介護保険制度見直し向けて急ピッチで審議が行われ、「かかりつけ医機能の制度整備」については社会保障審議会医療部会や第8次医療計画に関する検討会で審議が続いています。
介護保険部会では「給付と負担」をテーマに、第一号被保険者の保険料や自己負担の引き上げが大きな論点となっています。
健保連や協会けんぽ、経団連などいわゆる支払側の委員は制度の持続可能性を根拠に高齢者の自己負担の引き上げを主張し、利用者団体や事業者団体は利用控えなどを懸念して強く反対しています。
10月31日の第100回介護保険部会では、「現役並み所得および一定以上所得の判断基準」の論点が厚生労働省から次のように示されました。
●制度の現状等を踏まえ、「現役並み所得」「一定以上所得」の判断基準をどのように考えるか。
●その際、本年10月に施行された、後期高齢者医療制度の患者負担2割(一定以上所得)の判断基準が、後期高齢者の所得上位30%(現役並み所得者を含む割合)とされていることとの関係をどのように考えるか。
その後、11月28日の第103回の同部会では、「どのように考えるか」が、「検討を行うこととしてはどうか」に差し替えられました。
重要かつ利害の対立が明確な論点であるため、簡単に結論を出すことが難しいのはよく理解できます。
問題は、その審議の過程にあります。
お互いが持論を一方的に主張して「議論」がなされていないという印象だけが残るのです。
【一般的な政策決定のプロセス】
こうした審議会などが設置される理由としては、以下のようなものが挙げられます。
①行政の民主化
②専門的知識の導入
③行政の公正性・中立性の確保
④社会的な利害の調整
⑤各種行政の総合調整
とりわけ①の行政の民主化、②の専門的知識の導入が、重視される傾向にあると言われています(寺 洋平・東洋大学准教授)。
上図のように、民主主義的な政策決定において審議会はたいへん重要な意味を持っているのは間違いありません。
しかし現実には、行政機関の「隠れ蓑」とされる(森田 朗・東京大学名誉教授)、あるいは「陳情大会」の様相を呈しやすい(中村秀一・国際医療福祉大学大学院教授)、といった批判がついて回ります。
国民が政治不信に陥る一つの大きな理由に「政策がいつだれの責任において決定されたのかが不明確」というものがあります。
昨今は、「政治主導」「官邸主導」という言葉がメディアに頻繁に取りあげられます。
そうであれば、なおのこと主権者から付託された立法権、行政権を透明な形で行使することが必要です。
重要な意思決定が責任の所在が不明確なままなし崩しに行われ行くのは、決して「日本的」な美徳ではありません。
株式会社 ウエルビー代表取締役 青木正人
1955年富山県生まれ。
1978年神戸大学経営学部経営学科卒業。
大手出版社の書籍編集者を経て、出版社・予備校・学習塾を経営、その後介護福祉士養成校・特別養護老人ホームを設立・運営する。自治体公募の高齢者・障害者・保育の公設民営複合福祉施設設立のコンペティションに応募し当選。 2000年有限会社ウエルビー(2002年に株式会社に改組)を設立し、代表取締役に就任。